OECCについて

提言~低炭素社会に向けた我が国の更なる国際貢献に向けて

2017年10月30日
一般社団法人 海外環境協力センター

一般社団法人海外環境協力センター(OECC)は1990年に発足以来、世界の持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、海外環境開発協力分野における我が国の中核的組織として、各種調査研究や能力開発に係る活動を展開している。

気候変動問題への対応については、「パリ協定」に基づき、途上国も含め全ての締約国は、削減目標を中心とする「各国が決定する貢献」(NDC)を5年毎に提出・更新し、各国のNDCを実施するための諸対策を展開するとともに、「長期温室効果ガス低排出開発戦略」を策定・提出することとされており、途上国における取り組みが、これまで以上に重要視されてきている。

我が国では、「地球温暖化対策計画」を閣議決定(2016年5月)するとともに、「長期低炭素ビジョン報告書」(2017年3月)を公表し、これまで以上の革新的な取り組みを目指し、我が国の経験を最大限に活用し、途上国との協力を一層推進していくこととしている。

近年、新興国などパートナー国によっては、着実な経済成長を遂げている国がある一方で、依然として貧困からの脱却に勢力が注がれている国もあり、各国の社会経済の発展状況も大きく異なっていることから、そうした状況に応じて国際協力のあり方も多様となってきている。とりわけ、経済社会の発展段階や地理的条件等を考慮し、途上国のニーズに応じた戦略的な国際協力を実施することが求められている。

こうした協力にあたっては、各国の諸事情に照らし、きめ細やかなニーズの把握と対話を行い、パートナーシップに基づく協同作業を進めることが必要であり、我が国の経験共有に加え、共に形成するイノベーションを通じて、現場において直面する諸課題への具体的な解決策を見出せるよう協力していくことが必要である。

また環境省は、「環境インフラ海外展開基本戦略」(2017年7月)を策定し、今後気候変動緩和・適応対策をはじめとする主要分野において一層質の高い海外環境開発協力の推進を図っていく方針を明確にした。今後は、気候変動関係など各分野におけるより詳細な戦略の策定とその実施が求められている。

上述の通り、低炭素社会に向けた内外の動向に的確に対応し、世界の低炭素社会実現に向け、我が国の更なる国際貢献として今後取り組むべき方向について下記のとおり提言する。

1. 気候変動緩和対策

「パリ協定」においては、2020~2030年の「各国が自主的に決定する貢献(NDC)」に加えて、2050年までの世界全体を脱炭素でレジリエントな社会に方向付ける長期戦略の策定が求められている。これを支える資金の流れや技術の導入を促す世の中の仕組み(制度)を変革していくためには、革新的かつ統合的な取組が必要である。このため、日本が取り組んできた経験を踏まえ、さらに途上国と共に新たな社会の構築に向けたイノベーションの推進が極めて重要である。

世界規模での温室効果ガスの排出削減への貢献については、各国におけるNDCの策定・実施及び「二国間クレジット制度」(JCM)の下での案件形成の実施が円滑に図られるよう、我が国の優れた低炭素技術やノウハウを途上国に展開していくなどの国際協力を一層推進していくことが不可欠である。このため、JCMのこれまでの実施状況や、低炭素技術移転等の成果について評価を行い、将来のこうした制度運用のあり方に関する議論も視野に入れつつ、将来の発展を視野に入れた今後の国際議論をリードできるよう情報収集などを踏まえ、理論構築に万全の態勢で臨む必要がある。

また、NDCの策定・実施のための技術協力が不可欠であることから、我が国における制度実施の経験や技術・ノウハウ及び人材をフルに動員して、対象国とも連携し、当該国における緩和策実行のための推進体制や能力構築に努力を傾注していく必要がある。その際、制度・技術・資金等様々な面で統合した協力を展開できればパートナーとなる国においても即効性が期待できることから、大いに奨励されるべきものである。このため、パートナー国における実情に精通した取り組みが実現できることが不可欠であることから、平素より受け入れ国の社会情勢、政策措置の実施体制などについての情報を整備しておき、ダイナミックに対応しパラダイムシフトの実現に貢献できるような仕組みの構築が肝要である。

さらに、気候変動対策の着実な実施に当たっては、短期的なニーズの充足に加え、中長期的な視点に立った政策の立案、展開が不可欠であることから、我が国が長期ビジョンなどで検討した通り、具体的な目標設定とそれに到達できる道のり(ロードマップ)を明らかにしていくことが肝要である。

2. 気候変動適応対策

開発途上国においては、脆弱性が高く、気候変動適応策の推進は極めて重要であり、各国はこれまで以上に取り組みを深化させていくことが求められている。また各国は「パリ協定」に基づき、「国別適応計画(NAP)」を策定・実施を行い、セクター別取組を含む自国の開発戦略に適応課題を主流化し、統合的な取り組みを行うプロセスを進め、その進捗を条約事務局に報告することになっていることから、今後この分野においても国際社会における協力の強化が喫緊の課題となっている。我が国は、途上国において気候リスク情報の基盤を整備し、科学的知見に基づく適応策を推進できるよう、2020年を目途に「アジア太平洋地域適応プラットフォーム」(AP-PLAT)を構築するべく検討を進めているところであるが、本格稼働に向け、早急に準備を進めていくことが急務である。今こそまさに「適応策の国際戦略」を策定し、戦略的に国際協力を展開すべき時期に来ている。さらに、緩和適応両面において、新たに強化される透明性制度への対応を行うため、途上国各国の国内および国際的な対応を促進していく協力を進めていくことが重要である。

3. フロン対策

フロン対策は、「モントリオール議定書キガリ改正」を踏まえ、オゾン層保護・気候変動対策の双方の観点から関心が高まっていることから、民間企業とも連携しつつ各種支援、取り組みを戦略的に展開すべきである。とりわけ途上国において、将来にわたり、効果的な取組、技術が確実に対象国で普及されていくためには、パートナー国における制度構築や人材の育成が不可欠であり、このため専門的知見の集約が効率的に図られるよう各国におけるプラットフォームの構築を視野に入れた協力が展開されることが必要である。

4. 政策対話と能力開発

途上国における気候変動に係る政策を円滑に効果的に展開していくためには、当該政策の立案実施に携わる政策立案者、助言者や政策実行の実務者を対象とする政策対話やハイレベルの研修が有効である。我が国は、「地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」(APセミナー)等、パートナーシップを育む対話と協力、能力開発について長年の経験を蓄積しており、今後とも強化充実して継続していくことが重要である。

5. その他(都市間連携など)

我が国の地方自治体は、その地域における公害対策・環境対策に大きな成果をあげるとともに、気候変動対策においても計画策定や自治体独自の取り組みを地元企業・市民とともに実施してきた経験を踏まえ、アジア各国の対象都市との連携による都市レベルのマスタープラン作成・実施、さらにその下での個別プロジェクトの形成を支援(「都市間連携事業」)してきており、今後ともこうした枠組みのもとに協力を継続的に展開していくことが重要である。

また、先般金融安定理事会の気候関連財務情報開示タースクフォースが、気候変動のリスクの評価に関する報告書を発表した。公的年金基金等による化石燃料産業への投資撤退(ダイベストメント)やESG投資、PRIへの署名機関の増加など世界的に気候変動対応を企業経営の中に主流化しつつあることに留意して、世界の潮流に取り残されることのないよう、国の政策をダイナミックに推進させていく必要がある。