OECCについて

気候変動対策の更なる推進に向けた提言~国際社会における真の役割を果たすために~

2018年11月26日
一般社団法人 海外環境協力センター

はじめに

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第24回締約国会議(COP 24)は、2020年以降の「パリ協定」本格実施に向け、実施規則(ルールブック)の策定、グローバル・ストックテイクの前哨戦となる促進的対話を行う重要な会議となる。目下、世界各国においては「国が自主的に決定する約束」(Nationally Determined Contribution:NDC)の実施準備及び「適応計画」(National Adaptation Plan:NAP)の策定・実施等の作業が佳境に入ってきている。

国連においては、2019年の「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)で気候変動問題への取組(SDG 13)がレビューの対象となっている。また本年10月に公開された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の特別報告書(「1.5℃特別報告書」)では、地球平均気温が1.5℃上昇した場合の影響を明らかにした上で、長期にわたる取組の強化に加え、「持続可能な開発目標」(SDGs)とのリンケージをも意識して、より踏み込んだ形での気候変動緩和・適応対策強化の必要性を訴えている。

さらに来年6月日本は、議長国として主要20カ国首脳会議(G20サミット)を主宰し、それに先立ち開催される「環境・エネルギー大臣会合」も含め、気候変動対策に関する世界的議論をさらに進展させていく上で、主導的な役割を果たしていくことが期待されている。

こうした状況を踏まえ、海外環境開発協力分野の中核組織を目指す海外環境協力センター(OECC)として、気候変動対策の更なる推進に向け、日本が国際社会において求められている役割を真に果たしていくべき今後の方向性について、次のとおり提言をとりまとめた。

1. 気候変動の長期戦略策定の重要性

「パリ協定」においては、長期目標として平均気温上昇を2℃未満に抑える(1.5℃未満に抑える努力を追及する)ことを掲げている。「パリ協定」に先立って2013年に発表されたIPCC第5次評価報告書(AR5)は、2.0℃目標を実現するためには、2050年におけるCO2の実質排出量を2010年比40%~70%減、2100年にはゼロとする必要があり、急速な高効率機器の導入及び再生可能エネルギーの割合を2050年までに3倍から4倍以上増加させることを提唱している。これを踏まえ、「パリ協定」第4条では、途上国のCO2排出量が今後とも増加することは回避できないことを認識しつつ、世界全体のCO2排出量のピークアウト時期をできる限り早くすべきとし、「長期低炭素開発戦略」の策定を各締約国に促している。

日本は、2019年のG20サミット議長国として、世界の気候変動対策に関する国際議論をリードする立場から、まずは自らの積極的な姿勢を国際社会に対し示していく必要があり、できるだけ早期に、また内容面においてもインパクトのある「長期戦略」を策定することが求められている。とりわけIPCC「1.5℃特別報告書」で警鐘が鳴らされた状況の深刻さと対策の緊急性は、短期・中期・長期にわたり戦略的な気候変動対策を加速させるための具体的な道筋を明らかにする必要性を示しており、国内外からの日本政府のリーダーシップに対する期待は益々大きくなっている。

長期戦略の策定・実施は、今後の社会づくりのビジョンを示すとともに、目下の気候変動対策を一層前進させるための大きな一歩となる。OECCは、これら長期戦略の推進において積極的貢献を行う用意があり、日本政府において一日も早く長期戦略を策定されることを切に期待している。

2. コ・イノベーションの実現に向けて

環境省は、コ・イノベーション(Co-Innovation)に基づき気候変動対策を推進する「気候変動緩和策に関する国際協力ビジョン」を発表した(2018年3月)。これによると、「パリ協定」の目標を達成するためには、途上国・新興国において脱炭素化に向けた経済・社会への転換を図っていく必要があり、先進国から途上国への支援という一方向の発想だけではなく、各国がともに知恵を出し合うような協働体制の構築を通じて双方向でのイノベーションを目指していくことの必要性が唱えられており、この取組を世界に発信し、また着実に実施していくことが期待される。

また日本政府はCOP 23で「コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ」(Partnership to Strengthen Transparency for Co-Innovation:PaSTI)の立ち上げを表明した。この枠組みを通じて、特に途上国の民間企業の気候変動対策の透明性を高める社会的仕組みの構築を行う作業が進展中である。さらに環境省が昨年発表した「環境インフラ海外展開基本戦略」(2017年7月)では、質の高い環境インフラの海外展開を進め、途上国の環境改善、気候変動対策の促進に貢献していく方向性が示されており、この基本戦略を実施していく上でコ・イノベーションを反映していくことが重要となっている。

このような政策方針は、「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成に向けても大いに貢献していくことが期待出来ることから、日本は国際社会の先頭に立ってコ・イノベーションの推進に尽力していくことが求められている。

OECCは、途上国での案件発掘・組成や日本の事業者支援に関わる「二国間クレジット制度」(Joint Crediting Mechanism:JCM)について、その制度実施の早期の段階からNDCを含む途上国の上位政策実現への貢献や質の高い技術の水平展開*1を進めてきており、こうした実績は、社会基盤を向上させていくための仕組みとして他の国においても活用され始めている。

また脱炭素・強靭な社会づくりを進める途上国は、OECCにとって主要なパートナーであることから、今後とも、具体的な活動を通じて協力関係の拡大・深化を図っていきたい。例えば、途上各国が直近の課題として取り組むNDC実施準備・早期実施については、ベトナム等のASEAN諸国での計画の策定・更新、国内法制化や政策手段構築支援の実績を活かしながら、各国と協力してアジア太平洋諸国の先行事例を示していきたい。

さらにOECCは、環境省や国際協力機構(JICA)、国連機関、国際金融機関、民間企業及び地方自治体等との協力の下、これらの取組を推進し、国際的な動向や科学的知見を十分に踏まえながら対話を重ね、現場に根差し、具体的な経験に基づいた人材や社会づくりを応援していくことにより、日本の気候変動対策の一層の推進に貢献していきたいと考えている。

*1: OECCでは、ベトナム・ラオスなどにおけるアモルファス変圧器導入プロジェクト、ミャンマーにおける排熱回収(WHR)技術導入の水平展開などを実施中である。

3. 適応対策の拡大・深化

近年の気象災害の増大・深刻化は、気候変動への適応をより喫緊の課題と認識させる結果となっており、本年「気候変動適応法」が制定され、中長期にわたる気候変動の悪影響への対策を行う包括的な枠組みが構築された。また同法に基づく「適応計画」が近々閣議決定される見込み*2であり、幅広いステークホルダーの参画を得て国を挙げての本格的な取組が始まっている。

途上国においては、「適応計画」(NAP)の策定・実施開始が加速化しているものの、災害対策そのものの経験不足に加え、気候変動の科学的知見が必ずしも十分でないことが大きな課題となっている。日本では、「気候変動適応法」に基づき、これまでの災害対策の経験や科学的知見を踏まえ、環境省・国立環境研究所を中心に、「気候変動適応情報プラットフォーム」(A-Plat)を立ち上げ、国・自治体・企業等がそれぞれの立場で科学データを基に、より具体的な適応策を実施に移す活動が進展しつつある。

また、とりわけアジア・太平洋地域の各国においては、気候変動の悪影響への脆弱性が極めて高い国・都市・地域が多く、これらの国々の影響が、日本の経済社会にも悪影響を及ぼす可能性が高くなっている。こうした課題を抱える国々の対策を支援することを目的とする「アジア太平洋地域気候変動適応情報プラットフォーム」(AP-Plat)の準備が最終段階にきており、このイニシアティブをできるだけ早期に正式発足させ、本格的実施に移していくことを求めたい。

OECCでは、その準備段階の一つとしてタイにおける取組(T-Plat)への支援を初めとして、今後環境省等が進めていく途上国との適応分野の協力の推進に引き続き貢献していくことに加え、近年NAPや都市レベルでも適応計画の策定・実施・モニタリング及び評価(M&E)の取組を支援する段階に至っていることから、今後ともこの分野での取組を質の面でも充実させていきたい。

さらに、これらの現場での具体的な経験を踏まえ、気候変動適応に関する国際的な政策議論にフィードバックを行うことも重要である。本年東京で開催された「UNFCCC適応委員会専門家会合」及び「第27回気候変動に係るアジア太平洋地域セミナー」(主催:条約事務局、環境省、豪国外務貿易省及び国連大学。事務局:OECC)では、アジア地域における具体的な経験をUNFCCCでの議論に引き上げていく取組が、極めて重要であることが強調された。OECCは、この成果をCOP 24において「適応委員会」(AC)とも協力して発信し、COPでの議論に貢献していく計画であるが、今後とも日本政府においては、国際的な議論や政策枠組みの構築を進めていく上で、一層主導的な立場で世界をリードする役割を果たしていくことを改めて求めたい。

*2: 本提言発表の後、11月27日に閣議決定された。

まとめ

今回の提言は、COP 24を目前に控えての行動に焦点を当てたものとなっているが、日本は来年、G20サミットの議長国として、気候変動分野の世界の議論を推進していく上で、主導的役割を果たしていくことが求められており、今後1年間の取組が将来に大きな影響を与える重要な局面に立っていると考える。こうしたことを踏まえて、日本が気候変動対策分野において、様々なステークホルダーとの対話とパートナーシップを重視しつつ、科学的知見と現場で培った知見を踏まえ、建設的且つ着実な取組の推進役として世界をリードするとともに、COP 24などの国際交渉の場において積極的な役割を果たされることを切に願っている。

「COP24に向けた環境関連団体と環境省との意見交換会」(2018年11月26日@環境省)