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活動について

コベネフィットアプローチ

コベネフィットアプローチの推進

モンゴルでは、暖房用として使用する石炭による大気汚染が深刻な問題となっています。特に首都ウランバートルでは、大気汚染が2010年頃から急激に悪化し、2016年の微小粒子状物質の年間平均濃度は、市の中心部で世界保健機関(WHO)の基準値の7.5倍、12月には約80倍の値を記録しました。同年の大気汚染が原因の死者数は、モンゴル全体で約3,700名にもなります。このような状況を打開するために、OECCは、2013年より大気汚染物質(SOx、NOx、ばいじん)と温室効果ガス(CO2)を同時に低減するコベネフィット型の環境協力を行っています。具体的には、地域熱供給システムに着目して、日本とモンゴルの政府及び企業と協働し、石炭焚ボイラからガスボイラへの転換、さらには、大気汚染物質を排出しない熱源の創出に向けて、事業の展開を行っています。

2016年冬季のウランバートル市

 

モンゴルにおけるコベネフィット効果の実証

モンゴルでは暖房用燃料として石炭への依存度が高く、2010年頃から都市への急激な人口集中に伴う石炭燃焼の増加により大気汚染が深刻化しています。OECCは2013年から、大気汚染の一因となっている石炭焚き温水供給ボイラ(HOB)の改良(高効率化)を進めてきました。2016年には、石炭の使用量削減により、従来のHOBより温室効果ガス(CO2)は28%排出削減、大気汚染物質のNOxは76%、SOxは28%、ばいじんは59%と、大幅な排出削減を実証しました。2018年からは、モンゴル政府の方針により、HOBをSOxとばいじんが排出されないLPG焚き温水供給ボイラ(ガス焚きHOB)に転換する事業の支援を行いました。日本製ガス焚きHOBの導入により、CO2は37%、NOxは63%の排出削減を実証しています。

2013年から2016年の活動

2018年から2022年の活動

 

訪日研修の実施

OECCは、ウランバートル市の深刻な大気汚染を低減するため、日本製のガスボイラを小学校に導入し、実証試験の実施を支援しています。モンゴル冬季の氷点下30℃の環境下においては、暖房用の熱供給は子どもの生命を守るためのインフラで、今回の実証で用いるガスボイラが直接その役割を果たしています。それだけにガスボイラの故障・停止、ガス(LPG)の漏洩は避けなければならず、ガスボイラの適切な施工・管理が重要です。そのため、モンゴルのガスボイラ運営企業を日本に招聘し、ガス焚きHOBの製造会社による据付工事方法、ガスボイラの構造や仕様、保守管理の方法に関する研修を実施しています。

技術研修

 

工場視察

 

コベネフィット型プロジェクトの推進

OECCでは、ガス焚きHOBでの経験を活かし、モンゴルでのコベネフィット効果が見込まれるプロジェクトの展開を今後も支援していくための協議を、政府関係者及び日本とモンゴルの企業の3者間で進めています。例えば、「ウランバートル配電公社へのアモルファス変圧器の導入」や「モンゴル第2火力発電所への水素焚きガスタービン発電機の導入」「火力発電所の余剰電力を利用した水素の製造」などの環境配慮型の支援を通じ、温室効果ガスや大気汚染物質の排出削減だけでなく途上国が持続可能な開発を行えるよう貢献していきます。