UNEPプロジェクトにおけるフロンに関する調査・政策提言
オゾン層保護と気候変動対策のためには、空調機器や冷凍・冷蔵庫の廃棄時などに冷媒フロンを回収し、適切に再利用または処理する必要があります。しかし、多くの途上国ではフロンの回収・処理がほとんど行われておらず、仕組みづくりの知見や経験も十分ではありません。そこでUNEPは、大洋州13カ国を対象に、各国の実情に合ったフロンのライフサイクルマネジメントを検討するプロジェクトを実施しています。OECCは、法制度や実施体制の調査、課題分析、政策提言の策定を担当しています。
今回の調査では、マーシャル諸島、パラオ、フィジー、サモア、バヌアツの5カ国を2回に分けて訪問し、政府機関や関係事業者との協議、ワークショップへの出席を通じて各国の実情を把握しました。同じ大洋州地域に位置する国々でも、文化や食事、言語、正装などは実に様々です。一方で、フロンのライフサイクルマネジメントを進める上では共通する課題も見えてきました。

そのひとつが物流です。今回の出張では、東京から各国の首都を訪問するだけでも、経由便やいわゆるアイランドホッパーを利用し、合計16回のフライトを経験しました。人の移動ですらこれほど複雑であることを考えると、回収したフロンを適切に輸送し、処理先へ送り出すことがいかに難しいかが実感できます。
実際、大洋州の国々にはフロンの再生・破壊施設がなく、回収したフロンは国外で処理することが前提となります。そのため、有害廃棄物の国際輸送に関するバーゼル条約やワイガニ条約の下で、どのようなルートで輸送し、どこで処理するかまで含めて検討する必要があります。回収技術だけでなく、物流や制度設計も含めた総合的な課題でもあるのです。

国内に破壊処理施設がないため、
回収後も最終処理に向けた越境輸送手段の確保が課題
観光を支える空調と移行期のフロン管理
今回の訪問で改めて気づいたのは、「フロンはなぜそこにあるのか」という視点です。大洋州では、フロンを冷媒とする空調機器が主な使用源の一つです。空調は、商業施設やレストランなどで地域の人々の暮らしを支えるとともに、ホテルやリゾートなどの観光施設にも欠かせません。観光が大洋州の多くの国々の主要産業であることを考えると、こうした機器を安定的に利用できる環境を維持することは、地域経済にとっても重要です。私たち自身も出張でホテルを利用し、その恩恵を受ける中で、フロンの管理を自分たちにも関わる課題として考えるきっかけとなりました。
一方、モントリオール議定書とキガリ改正の下では、フロンの段階的削減と、低GWP冷媒や自然冷媒への移行が進められています。しかし、すべての機器を直ちに代替冷媒へ切り替えることはできません。観光を支える空調機器を移行期にも安定して使い続けるためには、フロンを適切に回収し、再生可能なものは品質を確認した上で再利用することも、選択肢のひとつです。

今後に向けて
フロンのライフサイクルマネジメントはオゾン層保護や気候変動だけでなく、その国の経済や人々の暮らしとも深く結び付いた課題でもあります。OECCは今後もUNEPや各国政府と連携しながら、大洋州地域における持続可能なフロンのライフサイクルマネジメントの推進に取り組んでいきます。


