OECCについて

理事長 挨拶

竹本 和彦

2024年の幕開けに当たり、年頭のご挨拶を申し上げます。

昨年は、地球環境問題への対応や持続可能な社会形成に向けた国際的な動きがダイナミックに展開されました。

12月ドバイにおいて開催された気候変動枠組条約COP28においては、パリ協定の目標達成に向けた世界全体の進捗状況を評価する「グローバル・ストックテイク」(Global Stock Take: GST)について初めての議論が行われ、その議論の結果を納めた文書が採択されました。この成果文書では、地球温暖化防止の世界目標(気温上昇を1.5℃に抑える)の達成に向け、各国におけるGHG削減努力の一層の野心向上を訴えるとともに、2030年までに世界全体の再生エネルギー容量を3倍にすること、排出削減対策を講じていない石炭火力発電の段階的廃止に向けた取組を加速すること、エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却(Transition away)を進めることなどを締約国に対し強く求めています。このため我が国においては、近い将来見直しが検討されるエネルギー基本計画をはじめとする気候変動対策の根幹をなす各種国家的戦略の策定に向けた議論に、上述の世界的合意がどのように反映されるかが今後の課題となっています。

また昨年我が国は、G7の議長国として様々な議論をけん引してきました。具体的には、全世界が直面する3つの危機(気候変動、生物多様性の損失及び環境汚染)を解決するための統合的な対応の必要性、都市の果たす役割に着目した取組の推進及び海洋プラスチック問題への対応などについて主導的な役割を果たしてきています。

都市の果たす役割の重要性に関しては、G7の文脈では都市・地方自治体のイニシアティブを推進していく上でのG7参加国の連携主体としてUrban7(U7)が組織されています。昨年3月東京にて開催されたU7市長サミット(主催:全国指定都市市長会及びイクレイ日本)において、その議論の成果として取りまとめられた「U7市長宣言」が全世界に向けて発信されるとともに、G7気候・エネルギー・環境大臣会合(4月、札幌)やG7都市大臣会合(7月、高松)での議論に反映されました。またIPCCの第7次評価報告書(AR7)サイクルにおいても、都市に着目した特別報告書(Special Report on Climate Change and Cities)の作成に向けた作業が開始されており、日本は国際応用システム分析研究所(IIASA)との連携の下、こうした国際議論に貢献すべく共同研究事業を進めています。OECCは、都市間連携事業やその他の海外協力案件を通じて修得した実務経験を踏まえ、この国際的研究プロジェクトに積極的に参画していく方針です。

こうした国際社会における議論の動向を踏まえつつ、OECCにおいては、これまで「自然を活用した解決策」(Nature-based Solution: NbS)や「気候変動にレジリエントな開発」(Climate Resilient Development: CRD)に焦点を当て、勉強を重ねてきましたが、今後とも国際社会が直面する課題への対処に向け、政策志向型研究活動に貢献できるよう努めてまいります。また、こうした考え方を海外環境開発協力事業分野においてさらなる展開が実現できるよう各種事業の戦略的展開を通じて、先進的な事例の積み重ねを目指していく方針です。

さらに、脱炭素社会の実現に向けた取組の強化がグローバルサウスも含めた国々に求められていく中、現場における問題解決に直結する対策事業の推進にも積極的にコミットしていけるような組織を目指してまいります。

加えて、会員活動の充実・強化に引き続き努めるとともに、各会員企業・団体の活動展開に役立つ情報の共有に向け、一層活発なアウトリーチ活動の展開を心がけていきたいと考えています。

この様にOECCは、2024年においても世界の脱炭素社会形成や持続可能な社会形成に向けた取組の推進を目指し、新たなチャレンジとして国際的議論にも貢献できるよう挑戦していきます。その意味で、「2024年を新たなチャプターの幕開けの年」と位置付け、各種取組を積極的に推進していく所存ですので、今後とも皆様方のご理解とご支援、ご協力をお願い申し上げます。

一般社団法人 海外環境協力センター

理事長竹本 和彦