2026.02.14

JICA気候資金研修の成果

OECCは、JICAが主催する課題別研修「気候資金アクセス強化-実務家向けの理論と実践」(2025年度)の企画・運営を担い、2025年12月1日から2026年1月30日にかけて、本研修を実施しました。

本研修には、バングラデシュ、カメルーン、エジプト、エチオピア、フィジー、ジャマイカ、マラウイ、モザンビーク、オマーン、フィリピン、タンザニアなど、12か国から計14名の研修員の参加がありました。制度が整っていない国もあれば、人材が不足している国もあり、それぞれ異なる課題を抱えつつ、資金を引き寄せるという共通の目的に向かって、本研修に臨みました。

研修の目的

本研修は、開発途上国における気候変動対策の推進に向けて、国際気候資金、特に世界最大級の気候資金ファンドであるGCF等へのアクセス能力の強化および、資金を活用した実効性のあるプロジェクト形成能力の向上を目的として実施しました。

プログラムは、遠隔研修、来日研修の2段階で構成され、講義、演習、グループワーク、視察、ディスカッションを組み合わせた実践的な内容となりました。

遠隔研修プログラム

遠隔研修では、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)における気候資金の枠組みや、パリ協定、SDGsとの関係について学ぶとともに、Green Climate Fund(GCF)の制度やプロジェクトサイクル、提案書作成の基礎について理解し、実務に直結する知識を習得しました。

さらに、OECCのスタッフが講師として講義を行い、カーボン市場およびパリ協定第6条、適応策やNbS(Nature-based Solutions: 自然を活用した解決策)やEbA(Eco-based Approach)、気候変動交渉や報告枠組みなど、気候資金に関連する幅広いテーマを取り上げました。今年度はオンライン講義を頂いた講師を訪日研修時にお招きし、OECCオフィスにおいて直接の質疑応答やディスカッションを行うことで、理解をより一層深める機会となりました。

さらに、インセプションレポートの発表やアクションプラン作成指導を通じて、各国の課題整理と問題意識の明確化を支援しました。研修員は自国の状況を踏まえた、アクションプランのテーマを検討に努めました。

遠隔研修QAセッション

来日研修プログラム

来日研修では、講義と実地研修を通じて、日本の気候変動政策や技術、現場での取組への理解を深めるとともに、Project Cycle Management (PCM)の考え方を学び、プロジェクト形成能力の強化を図りました。

PCM演習では、Stakeholder Analysis(関係者分析)、Problem Analysis(問題分析)、Objective Analysis(目的分析)、Project Design Matrix(プロジェクト設計)といった一連のプロセスを学び、最終的なアクションプラン作成に臨みました。

アクションプラン作成の過程では、少人数のグループに分かれて演習を繰り返し実施し、参加者は自国の課題を持ち寄り、議論を重ねながら分析を深めていきました。異なる背景を持つ参加者同士の意見交換は、新たな視点をもたらし、より実践的な検討へとつながりました。

さらに、JICAによるGCF活用の取組、日本政府のGX政策や排出量取引制度に関する講義を通じて、政策レベルでの資金動員の仕組みについての理解も深まりました。こうした知見とグループワークで得た気付きを踏まえ、参加者は自国の状況に応じたアクションプランを具体化していきました。

グループディスカッション

グループワーク風景

グループワーク風景

視察および現場学習

訪日期間中には、つくば・東京・福島を中心に、研究機関や自治体、民間企業等を訪問し、日本の先進的な取組を実地で学びました。

国立環境研究所や森林総合研究所などの研究機関に加え、再生可能エネルギーや水素関連施設、気候スマート農業や防災・復興に関する現場を訪問し、科学的知見に基づく政策形成や技術実装の具体例に触れました。

水素関連施設の視察

水素関連施設の視察

研究所の視察

アクションプランの策定と成果

本研修の最終成果として、各研修員は自国の課題に基づいた気候資金活用に向けたアクションプランを作成し、最終発表会において発表しました。

これらのアクションプランは、単なるアイデアにとどまらず、GCF等への申請を見据えた具体的なプロジェクト案として整理されており、自国の国家政策や開発計画との整合性に加え、実施体制や資金動員の可能性までを含めた実務的な内容となっています。研修で学んだPCM手法や政策的知見を踏まえ、各参加者が自国の状況に即した形でアクションプランを作成しました。

アクションプラン作成

作成にあたっては、グループワークやOECCスタッフとの議論を繰り返し行い、対話のプロセスを通じて、各自の課題認識はより明確になり、計画は段階的に具体化されていきました。異なる国の視点からのフィードバックは、新たな気付きや視点をもたらし、実現可能性の検討を深める重要な機会となりました。このようにして磨き上げられたアクションプランは、今後のプロジェクト形成や資金申請、さらには政策立案に活用されることが期待されます。

最終発表の様子

最終発表の様子

最終発表ディスカッション

さらに、本研修の成果は、各国における具体的な行動としてすでに現れ始めています。マラウイから参加した研修員は、帰国後間もなく、地域の関係者を招いたステークホルダーコンサルテーションを開催し、研修で策定したアクションプランの実行に向けた議論を開始しました。

加えて、同研修員からは、来日時にJICA筑波センターから近隣施設まで研修員同士で自転車を利用していた経験をヒントに、環境負荷の低減を目的とした自転車利用促進の啓発イベントを現地で開催予定との報告も寄せられています。こうした取組は、研修での学びが現地の社会実装や行動変容へとつながっていることを示す好例といえます。

本研修で得られた知見や経験が、各国における政策検討のみならず、市民レベルの実践や意識啓発へと波及し始めていることがうかがえます。

Cycle for the Environmentイベント

ステークホルダーコンサルテーション

おわりに

本研修を通じて、研修員は気候資金の制度理解にとどまらず、実際のプロジェクト形成に必要な論理的思考や実務能力を強化しました。

OECCは今後も、本研修で得られた知見とネットワークを活かし、各国における気候変動対策の推進と、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

修了式集合写真
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