OECCは、2026年2月17日に東京都内にて開催されたJPRSI(環境インフラ海外展開プラットフォーム)2025年度第5回セミナーの事務局として、全体の企画・運営を行いました。当日はさまざまな分野から会場・オンライン合わせて約60名の参加者を迎えました。
プログラム・発表資料はこちらのページからご覧いただけます。
JPRSIセミナーにおけるOECCの役割

OECCはJPRSI事務局として、JPRSIの全ての活動に関する企画・運営を支援しています。今回のセミナーは「気候変動適応に資するNbS(※1)事業展開 ~民間企業参画に向けて~」をテーマに、オンラインで開催されました。国内民間企業によるNbSの観点を取り入れた適応事業の具体的な取組事例や、今後の事業展開の紹介がありました。あわせてADB(アジア開発銀行)からNbS担当者を招き、パネルディスカッション等を通じて企業によるNbSの観点を取り入れた適応策の実施に向け、特に展開が期待される分野や、日本の事業者による参画の可能性、アジア太平洋諸国からのニーズや最新動向について議論しました。
OECCは、プログラム企画、スケジュール調整、登壇者・参加者対応、当日の運営など、多岐にわたる業務を推進しました。
※1 自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)。健全な自然生態系が有する機能を活かして社会課題の解決を図ること
参考:環境省「自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)」
NbS事業展開に向けて官民ともに議論

環境省による、NbS観点を取り入れた適応策の説明
環境省・適応室長の挨拶に続き、ADB気候変動持続的開発局の遠藤氏およびADBラオス人民民主共和国常駐代表部のザファー氏より、NbSに関する取組が紹介されました。
ADBのアプローチ
気候変動政策の動向に関するプレゼンテーションでは、脱炭素社会に向けたシナリオ研究アジア太平洋統合モデルAIM (Asia-Pacific Integrated Model)に関する発表後、在ASEAN各国(タイ・インドネシア・シンガポール・ベトナム)日本大使館に在籍する環境アタッシェらが、各国の環境政策の現状や環境ビジネスの最新動向を共有しました。
●投資プロジェクトへのNbS主流化について
ADBでは、NbSをアジア・太平洋地域における環境持続可能性向上への重要な手法と位置付け、環境問題、防災・減災、気候変動といった複合課題への対応に活用していることが示されました。NbSは農業、運輸、都市開発、水資源管理など幅広い分野の案件に組み込まれており、植林、流域・沿岸保全、アグロフォレストリー等が具体例として挙げられました。
また、政策強化やプロジェクト設計の高度化、制度面の能力向上を通じて資金動員を重視した支援を行っていることが紹介されました。さらに、都市・農村・沿岸等の景観単位での包括的評価を重視し、個別課題にとどまらない、構造的対応を図っている点が強調されました。
●ラオスにおけるNbS実践事例 -アグリフードシステムの変革に向けて
ラオスでは、マクロ経済の安定化が進む中、輸出拡大と付加価値向上を通じた持続的成長が課題とされています。農業輸出額は約14億米ドルで、キャッサバ、ゴム、木材、コーヒー等の多様な生産基盤を有する一方、洪水や干ばつ、高温の増加といった気候リスクが、生産性や食料安全保障に影響を及ぼしている点が指摘されました。
ADBが実施する「Sustainable Agrifood Systems Sector Project」は、小規模農家支援、輸出志向型農業の強化、バリューチェーン整備、食品安全体制の向上を柱とし、気候レジリエントな農業システムの構築を目指すものです。同プロジェクトには、レジリエントな作物・品種の導入、水資源および生態系の調整機能の活用、有機的・生物学的手法による土壌改良、受粉や生物多様性の保全といった取組を通じてNbSの考え方が組込まれており、いずれも持続可能な資金供給や民間主導型アプローチを通じて実施されています。
NbSの観点を取り入れた、日本における適応策事例

民間企業の取組紹介
環境省に続き2社の国内企業より、日本におけるNbSを活用した適応策やその事例について紹介がありました。
●NbSの観点を取り入れた適応策(環境省)
NbSは、自然の機能を持続可能に活用して社会課題の解決につなげる考え方であり、複数の課題に同時に対応できる点や資源を効率的に活用できる点が特徴です。EbA(※2)やEco-DRR(※3)などの関連概念を包含する枠組みであり、日本を含む各国の適応計画にも位置付けられています。多くの国からの関心が示されていることをふまえ、取組促進を進めていきたいことが示されました。
※2 生態系を活用した適応策(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)。土地の生き物や環境を保護して、自然の持つ力によって災害による被害を防止又は軽減させる取組・考え方
参考:環境省「生態系を活用した気候変動適応策(EbA)計画と実施の手引き」
※3 生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)。自然を効果的に利用して、近年激甚化・頻発化する自然災害の防災や減災の役に立てようという考え方
参考:環境省エコジン「Eco-DRR」
●海藻バンクシステムと気候変動適応(民間企業)
海水温上昇や極端現象の増加により藻場の減少が進む中、ブルーカーボン機能や防災機能を有する藻場再生の重要性が示されました。「つくる・育てる・増やす・測る」の工程を通じた再生モデルであり、国内5港で展開されています。海藻カートリッジを共有するネットワーク型の仕組を特徴とし、地域経済への波及効果も期待されています。今後は技術高度化と国際発信を進める方針が示されました。
●サステナブルな舗装革命 -地域社会の環境問題を解決(民間企業)
放置竹林問題と雑草対策を同時に解決する舗装材の紹介がありました。自然素材100%であり、CO₂吸収機能やヒートアイランド抑制効果を有する点、竹資源の循環利用を促進できる点が強調されました。タイでの事業化検討を進めていることが共有され、将来的にはライセンス展開による地産地消型モデルの確立を目指す方針が示されました。
セミナーで得られた成果
最後のパネルディスカッションでは、各企業の取組や業界の状況について、活発な議論が行われました。なかでもアジア・太平洋地域における、NbSの観点を取り入れた適応策への需要の高まりを背景とし、海外展開の可能性が議論されました。
一方、共通する課題として、制度や基準、認証枠組の違いがあり、官民連携による制度整備と資金スキーム構築の重要性が共有されました。
環境省からは官民および国際機関を含むネットワーク形成が重要であることが示されました。
OECCにとってJPRSIセミナーの開催支援は、海外環境開発のさらなる展開に向けた、重要な業務です。今後も関係機関と連携しながら、持続可能な未来のために力を尽くしていきます。
JPRSIの活動
JPRSIのウェブサイトでは、環境インフラ海外展開に関する様々な情報を提供しています。本セミナー活動記事もあわせてご覧ください。
- JPRSIウェブサイト:環境インフラ海外展開プラットフォーム
- JPRSI 2025年度第5回セミナーレポート:https://jprsi.go.jp/ja/activity-report/r7_seminar_16
