2025.04.24

循環経済推進への貢献 ~第12 回アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム~

 2025年3月3日から3月5日に、インド共和国ジャイプール市において、第12回アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラムが開催されました。本フォーラムは、アジア太平洋地域における3Rおよび循環経済の推進に貢献する制度や技術の情報共有、ハイレベルによる対話の推進を目的として、アジア諸国及び太平洋島嶼国30カ国の政府、国際機関、民間企業、研究機関、NGOなどから約1000名が参加し、SDGsとカーボン・ニュートラルの達成に向けた循環型社会の実現をテーマとして活発な議論が行われました。また今次フォーラムにおいては2025年から2035年の10年間における3R・循環経済関係の目標を定めた「3R・循環経済に関するジャイプール宣言」が採択されました。

 OECCでは、本フォーラムを主催する関係機関と連携し運営を支援するとともに本フォーラム内で環境省が主催する「Accelerating Circular Society: Expansion and Reproducibility of Municipal Achievements in 3R and Circular Economy」および「Decarbonization Technologies in the Waste and Resources Sector for Realizing a Circular Economy」の2つのサイドイベントを現地で開催しました。また、同時開催された国際展示会についても支援し、インドと日本におけるネットワーク作りも担ってまいりました。

第12 回アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム

 アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラムは、アジア各国における3R推進による循環型社会の構築に向け、アジア各国政府、国際機関、援助機関、民間セクター、研究機関、NGO等を含む幅広い関係者の協力の基盤となるものとして日本国環境省の提唱により2009年11月にその前身であるアジア太平洋3R推進フォーラムが設立され、東京での開催を皮切りにこれまでに11回の会合が開催されてきました。とりわけ、第10回会合(2020年開催)からはアジア太平洋3R・”循環経済”推進フォーラムと改称し、3Rおよび循環経済に関するハイレベルの政策対話の促進、各国における3Rプロジェクト実施への支援の促進、3Rや循環経済構築の推進に貢献する制度や技術の情報共有、関係者のネットワーク化等を目的に開催されています。

 今回は、インド共和国がホストとなり、日本国環境省(MOEJ)、インド住宅都市省(MOHUA)、国連地域開発センター(UNCRD)、国連経済社会局(UNDESA)および国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が主催を務め、アジア太平洋地域におけるSDGsとカーボン・ニュートラルの達成に向けた循環型社会の実現のため活発な議論が行われました。また、2013年に採択された「ハノイ3R宣言」(2013~2023年)の後継文書として、2025年から2035年の10年間における3R・循環経済の推進に関する目標を定めた「3R・循環経済に関するジャイプール宣言」が採択されました。

 会場内では3R及び循環経済の推進を後押しすべく、さまざまなサイドイベントや3R・循環経済の推進に資する国際展示会等が行われ、多くの参加者が訪れました。

サイドイベントの開催:循環型社会の加速と廃棄物資源分野の脱炭素技術

 循環型社会の加速に関するサイドイベント(Accelerating Circular Society: Expansion and Reproducibility of Municipal Achievements in 3R and Circular Economy)では、3Rや循環型社会を実現する上での、都市の課題に対する革新的な解決策を実現する自治体の役割に着目し、都市や自治体による取組と成果を共有し、その成功の要因について議論を深めました。

 自治体の中には、廃棄物削減、資源効率化、脱炭素化において革新的な政策や実践的な取組を通じて循環型社会の形成へ大きな進歩を遂げたところもあり、これらの成功モデルは、都市・自治体が循環型社会への移行をいかにリードできるか、貴重な示唆を与えるものでもあります。本セッションでは、政策、技術、コミュニティ参画等のアプローチを通じて、他の都市への導入・再現性を高め、循環型社会への移行を加速させることを目的に、鹿児島県大崎町のリサイクルの取組とインドネシアに拠点を置きコミュニティの支援を実施しているKopernikが実施する循環経済に関するさまざまな取組事例が紹介されました。

 続くパネルディスカッションには、大崎町、Kopernikに加えてUN-Habitat、UNIDO、ラジャスタン州公害防止委員会、ジャイプール市が参加し、それぞれの立場での廃棄物処理に関する実状と課題・取組、循環経済の推進に関する活発な議論が行われ、都市の取組はコピー&ペーストのようなアプローチではなく、地域特性にソリューションを適合させることが重要であるという意見や、そのためにも事例共有とコラボレーション、パートナーシップの推進が肝要であるというポイントが示されました。

 また、「循環経済の実現に向けた廃棄物・資源分野における脱炭素技術」(Decarbonization Technologies in the Waste and Resources Sector for Realizing a Circular Economy)では、日本の経験を元に、ネット・ゼロ達成、循環経済の実現を目指した最新の廃棄物処理およびエネルギー回収・利用への取組を紹介しました。

 日本では戦後の経済発展および都市への人口集中に伴って都市ごみが急増し、公衆衛生の悪化が大きな社会問題となったことから、ごみの衛生処理と減容化のため、各都市でのごみ焼却施設の導入が進められるとともに、埋立方式についても革新的な工法が開発・導入されてきました。さらに近年は、廃棄物の焼却に伴う熱や電力等のエネルギーを回収し活用する廃棄物発電システムの導入が進み、3Rの実施と適正処理を確保した循環型社会形成の促進に大きく寄与しています。

 このサイドイベントでは、日本の企業各社より、廃棄物発電、焼却熱利用技術、CCUS、埋立工法(福岡方式)、浄化槽、下水汚泥処理・固形燃料化、廃棄物管理の総合コンサルティングといった技術や経験について幅広く紹介いただきました。改めて、日本で培われてきた技術・経験は世界に誇れるものであり、インドおよび多くの国・都市で抱える課題解決に確実に貢献するものであることを紹介する機会となりました。

サイドイベントの様子

国際展示会の開催と日本企業の出展

 本フォーラムでは、インド政府と協力して資源循環分野における国際展示会を開催し、廃棄物発電や浄化槽、計測・モニタリングなどの技術を有する日本企業の出展がありました。インド住宅都市省のマノハル・ラル大臣やトカン・サフ閣外大臣、ラジャスタン州のシャルマ州首相(Chief Minister)、インド環境森林気候変動省のヤーダブ大臣なども展示会場を回られました。日本企業の各社ブースにて技術や活動を直接紹介する機会を得ることもできました。

展示ブースの様子

終わりに

 インド国内では脱プラスチックに向けて使い捨てプラスチック製品を禁止するなど、政府の積極的な施策展開もあり、市民の理解や意識の醸成が進み、プラスチックからの代替やリサイクルの取組が大きく進展しているように感じました。廃棄物の埋め立てに伴う衛生の問題、また太陽光パネルのリサイクルを今後の課題として考えているといった話を現地で伺うとともに、日本の政府・企業への期待も非常に大きく、今後の共同・協業の可能性についても高く感じることができました。3R・循環経済の分野においても、官民が一体となった取組を推進していくための懸け橋となるよう、OECCも引き続き貢献していければと考えています。

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