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活動について

自然活用解決策(NbS)

気候変動と生物多様性を一体で取り組む「自然を活用した解決策」

「自然を活用した解決策(Nature-based Solution: NbS)」は2009年に国際自然保護連合(The International Union for Conservation of Nature :IUCN)により提唱されたコンセプトで、「社会課題に効果的かつ順応的に対処し、人間の幸福および生物多様性による恩恵を同時にもたらす、自然の、そして、人為的に改変された生態系の保護、持続可能な管理、回復のため行動」(IUCN, 2016)と定義されています。近年、生物多様性や気候変動適応などに関連した国際的議論において、NbSの果たす役割が注目を浴びており、気候変動と生物多様性は、今や一体として取り組むべきとの認識が共有されています。OECCは、植林やREDD+、ブルーカーボン(藻場やマングローブ植林)など自然をベースにしたカーボン・クレジットや、NbSの概念に包含される「生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction: Eco-DRR)」に関する調査や案件形成等を行っています。また、国連生物多様性条約締約国会議(CBD-COP)や関連する国際会議において、日本政府の政策立案を支援しています。

NbS(自然を活用した解決策)EbA(生態系を活かした気候変動適応)、Eco-DRR(生態系を活かした防災・減災)の概念の相互関係(西廣、2021)、提供:国立環境研究所

 

フィリピン・ビサヤ諸島におけるマングローブ植林事業の調査

OECCは林野庁による途上国における森林保全・植林プロジェクトへの二国間クレジット制度活用を目的とした業務の一環として、2022年にフィリピン・ビサヤ諸島におけるマングローブ植林事業の調査を実施しました。この植林事業は、カネパッケージ株式会社が2009年より社会貢献活動(CSR)として地域コミュニティ、現地の地方自治体および関連省庁と協力して実施する取組で、これまでに1,300万本以上のマングローブが植林されています。OECCは、マングローブ植林による温室効果ガス吸収量の推計やステークホルダーへのヒアリング調査を実施し、マングローブ生態系の保全と地域コミュニティへの裨益につながるカーボン・クレジット創出に向けた検討を行っています。

OECCによるマングローブ植林事業のカーボン・クレジット化に関する調査

※本マングローブ植林事業の詳細:
①動画(YouTube)
②カネパッケージ報告書(PDF・カネパッケージ)

 

今後の取組~農業分野におけるプロジェクト形成の支援

近年、農地利用のための森林伐採や化学肥料・化学合成農薬の使用による生物多様性の損失や土壌汚染、大気中への温室効果ガスの放出が問題となっており、農業分野における持続可能な取組への注目が高まっています。これより、従来の農法を見直し、気候変動対策と生物多様性保全に貢献できる環境保全型農業を取り入れることが期待されます。OECCは、これまでの気候変動対策プロジェクトに関する豊富な知見を活かし、生物多様性プロジェクトの一環として農業分野での日本政府・企業による国際的な取組を支援します。

 

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関する支援

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」や、「科学に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)」など、企業による環境に関する情報開示の動きは世界的に拡大しており、最近は生物多様性に関する情報開示として、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」も脚光を浴びています。OECCは、「コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)」等の業務を通じて、途上国の企業の気候変動関連情報開示に加えて、証券取引所による情報開示制度の構築を支援してきた経験やネットワークを活かし、生物多様性に関する情報開示も支援します。

 

国際交渉支援業務

地球規模で生じる生物多様性に関する問題を解決するために、1993年に発効したのが生物多様性条約です。本条約の下、生物多様性の問題を解決するため、資源動員や能力構築、科学技術協力を通じた多国間協力が進められています。OECCは、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議に日本政府代表団の一員として参加し、国際交渉支援を担いました。生物多様性条約などで培った経験を活かし、その他の国際交渉も支援していきます。

生物多様性条約第15回締約国会議における政治的議題に係る決議採択時の様子